【完全ガイド】データセンターBCPとは?
対策の考え方から選び方・事例まで徹底解説

【完全ガイド】データセンターBCPとは?対策の考え方から選び方・事例まで徹底解説

災害や広域停電、ランサムウェアなどのサイバー攻撃の脅威が高まる中、自社の重要システムやデータを止めずに守れる体制になっているか不安を感じていないでしょうか。「社内のサーバールームでは限界がある」「クラウドだけで本当に安全か」と悩むIT・情報システム担当者も多いはずです。その備えを具体化するうえで重要になるのが「データセンターを活用したBCP対策」です。
この記事では、BCPの基本概念から、データセンターが果たす役割、失敗しない選び方、導入事例までを最新トレンドを交えて解説します。自社に必要な備えを見直し、BCP対策の判断基準を作りたい方はぜひ役立ててください。

30秒で読める本記事の要点

  • 01

    BCP(事業継続)の基盤には、電源・回線・監視が冗長化された「データセンター」が不可欠

  • 02

    復旧目標(RPO・RTO)をシステム別に定義し、具体的な対策構成や発災時の初動ルールを設計する

  • 03

    データセンター選びの最大の鍵は、自社との「同時被災を避ける立地」と遠隔地でも復旧を進められる「運用代行サービスの充実度」

目次

  1. BCP(事業継続計画)とは?
    1. 1.1. 従来の防災活動とBCPの違い
    2. 1.2. BCP対策が重視される背景
    3. 1.3. BCPで重要な指標(RPO・RTO)
  2. なぜデータセンターがBCPの要になるのか
    1. 2.1. 自社内だけでは不十分になる可能性がある
    2. 2.2. データセンターが果たす役割
  3. データセンターを活用した具体的なBCP対策
    1. 3.1. バックアップの遠隔保管
    2. 3.2. DRサイトの構築
    3. 3.3. 回線と電源の冗長化
    4. 3.4. 運用代行と初動対応の整備
  4. BCP対策で失敗しないデータセンターの選び方【6つの重要ポイント】
    1. 4.1. 立地と同時被災リスク
    2. 4.2. 電力設備と停電対策
    3. 4.3. 回線冗長と通信継続性
    4. 4.4. 建物・防災設備の仕様
    5. 4.5. 運用保守と初動対応
    6. 4.6. 拡張性と費用の見極め
    7. 4.7. BCP発動基準を定め
    8. 4.8. 社内に共有する
  5. 【立地が鍵】災害リスクから見るおすすめデータセンターエリア
    1. 5.1. 立地を見るときの基本軸
    2. 5.2. 首都圏・近畿圏の特長
    3. 5.3. 北海道・東北の特長
    4. 5.4. 中国・四国・九州の特長
    5. 5.5. おすすめエリアの考え方
  6. 導入事例:株式会社フォーサイトさまのBCP対策
    1. 6.1. 課題:750万本の講義動画(資産)のバックアップ対策の整備
    2. 6.2. 選定理由:全国数社の候補からQTnetを選んだ3つの理由
    3. 6.3. 導入:スムーズな移設と今後の展開
    4. 6.4. この事例から読み取れること
  7. データセンターBCPに関するよくある質問
  8. まとめ

1. BCP(事業継続計画)とは?

この章では、BCPの本質・対策が重視されるようになった背景と事前設計で欠かせない2つの指標(RPO・RTO)を説明します。
特にRPO・RTOは後の設備・方式の選定を左右する重要な判断軸になるため、必ず把握しておきましょう。

1.1. 従来の防災活動とBCPの違い

BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)とは、災害・停電・感染症・サイバー攻撃などの緊急事態が起きても、重要業務を止めない・あるいは許容時間内に復旧させるための計画です。従来の防災活動とは、守る対象が大きく異なります。

防災は「人命・資産を守ること」を目的とします。一方BCPは、「事業を守ること」が目的です。
たとえば、自社の建物や設備に被害がなくても、サプライチェーンの途絶や取引先の被災によって事業が継続できなくなるかもしれません。

BCPはそうした広い視点で、「どの業務を優先して残すか」「どこまでの水準で復旧するか」まで決める計画です。

BCPと合わせて知っておきたいBCMとは?

CPとあわせて知っておきたい言葉にBCM(Business Continuity Management:事業継続マネジメント)があります。
BCMはBCPの策定・見直し・リソース確保・教育・訓練など、平常時のマネジメント活動全体を指します。BCPが「計画書」であるのに対し、BCMは「継続的な運用の仕組み」と捉えると理解しやすくなります。

1.2. BCP対策が重視される背景

BCP対策が重要視されたのは、2011年の東日本大震災がきっかけとされています。直接の被害を受けなかった企業でも、サプライチェーンの寸断や電力供給の不安定化により事業継続に支障が生じるケースが広範囲に及びました。
「自社の設備が無事であれば事業は続けられる」という前提が崩れたことで、広域災害に備えた体制整備の必要性が経営課題として認識されるようになったのです。

現在は自然災害にとどまらず、パンデミック・サイバー攻撃・設備障害など、多様なリスクへの備えが求められています。技術の発展により事業活動が多様化・複雑化した結果、自社資産への被害が軽微でも、事業継続に致命的な影響が出るケースが増えてきたのです。
緊急事態がいつ発生するか予測できない以上、BCPの策定と継続的な見直しは経営上の重要な前提となっています。

1.3. BCPで重要な指標(RPO・RTO)

BCP・DR(Disaster Recovery:災害復旧)の設計では、RPOとRTOを先に定義する必要があります。この2つが曖昧なままでは、必要な設備もバックアップ方式も決まりません。

指標 意味 考え方の例
RPO
(Recovery Point Objective:目標復旧時点)
どの時点までデータを戻せればよいか。許容できるデータ損失の大きさを示す。 受発注システムなど頻繁にデータが更新される業務では数時間〜当日分が目安。更新頻度が低い参照系システムでは前日分でも許容できるケースがある。
RTO
(Recovery Time Objective:目標復旧時間 )
どれだけの時間で業務を再開するか。許容できる停止時間の長さを示す。 生産管理や受発注など停止が売上に直結する業務は数時間以内が目安。総務・情報系など間接業務は半日〜翌営業日が許容されるケースが多い。

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※ 設定値は業種・システムの重要度・コストとのバランスによって大きく異なります。


重要なのは、システムごとにRPO・RTOを設定することです。受発注システムで許容するRPOを長く設定しすぎると、障害時に直近の取引情報を失うリスクがあります。
この整理ができると、バックアップ保管で十分なのか、待機系サーバーを別拠点に置くべきか、クラウド併用が適切かという判断がしやすくなります。

2. なぜデータセンターがBCPの要になるのか

BCPの重要性を理解して対策しても、自社内の設備だけで十分な水準を確保しようとすると、必要な要件を満たせないことがあります。
ここでは、自社内設置の課題と、それを解決するデータセンターの役割を整理します。

2.1. 自社内だけでは不十分になる可能性がある

自社内にサーバーを置いた構成は、平常時の運用では扱いやすい反面、BCPの観点では弱点が出やすくなります。
停電時の電力確保、長時間の空調維持、火災対策、通信回線の冗長化、24時間監視を自前で揃えるには、設備投資も運用体制も重くなります。

また一例として、サーバー室が無事でも、周辺条件が復旧を妨げるケースなどもあります。
たとえば、地域一帯の広域停電、自社ビルの入館制限、交通網の麻痺による担当者の出社困難・保守員の到着遅延などが発生した場合、復旧作業が進まず事業に致命的な支障をきたす可能性が高まるでしょう。
BCPは機器の保全だけでなく、「担当者が物理的にアクセスできない状況下でもシステムを維持・復旧できるか」という視点まで含めて設計する必要があります。

2.2. データセンターが果たす役割

データセンターは、自社ビル内に集中しがちな本番機・バックアップ設備を地理的に分散し、停電や空調停止・水害による同時被災リスクを解消するBCPの実行基盤です。社内のサーバールームでは確保しにくい冗長性と拠点分散を、一体で提供できる点に本質的な価値があります。

データセンターを活用することで、以下の要素を一体で確保できるでしょう。

  • 物理的な入退室管理と24時間365日の有人監視
  • 冗長化された無停電電源装置(UPS:Uninterruptible Power Supply)と非常用発電機
  • 複数系統の通信回線引き込み
  • 免震・耐震構造の建物と冗長化された空調設備

これらを自社で同等水準に整えることは、コストと運用負荷の面から現実的でないケースがほとんどです。
データセンターを「サーバーの置き場所」ではなく、事業継続の実行力を支えるインフラとして位置づけることが、実効性のあるBCP設計の出発点になります。

3. データセンターを活用した具体的なBCP対策

BCPは計画書を作るだけでは機能しません。「どこで・何を・どの順番で動かすか」をシステム構成まで落とし込むことが、実効性ある対策の条件です。

データセンターを活用したBCP対策は、大きく以下の4つの柱で構成されます。

  • バックアップの遠隔保管
  • DRサイトの構築
  • 回線と電源の冗長化
  • 発災時の運用代行と初動対応の整備

3.1. バックアップの遠隔保管

最も取り組みやすいBCP対策は、バックアップデータを自社拠点の外に保管することです。業務データや設定情報が別拠点に残っていれば、本番サーバーが停止しても復旧の土台を確保できます。

ただし、バックアップは「取得できていること」と「戻せること」は別物です。実際の運用では、バックアップジョブの成功確認よりも復元テストの未実施が弱点になりやすい場面があります。

以下の点を定期的に確認してください。

  • 日次・週次・月次の保持世代と、どの時点まで戻せるか
  • 復元に必要な時間とアプリケーション整合性の有無
  • 暗号化とアクセス権管理の状態
  • 定期的な復元テストの実施有無
  • ランサムウェア対策としてのデータ不変性(イミュータブルバックアップ)やオフライン保管の有無

基幹DBとファイルサーバーを別々に保全していても、復旧時点がずれると業務再開に支障が出るケースもあるでしょう。業務単位で整合性が保てる設計にしておくことが重要です。

3.2. DRサイトの構築

より高い事業継続性を求める場合は、データだけでなく稼働環境そのものを別拠点に用意するDRサイトの構築が有効です。
本番環境が停止したときに別拠点の環境へ切り替えて業務を再開する考え方で、バックアップ保管との違いは稼働環境を持つ点にあります。
DRサイトには段階があり、コストと復旧速度のバランスをシステムごとに選び分けることが基本です。

方式 概要 向く用途
バックアップ型 データ保全を優先し、復旧時に環境を再構築する 復旧時間にある程度余裕がある業務
コールドスタンバイ 予備環境を用意するが、平時は停止している 比較的重要だが常時待機までは不要な業務
コホットスタンバイ 本番に近い環境を常時待機し、切替を短縮する 停止許容時間が短い基幹業務

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設備を整えるだけでなく、誰がどの条件で切り替えるかという運用ルールの明文化が、技術設計と同等に重要です。切替判断と切戻し判断が曖昧なままでは、設備があっても初動が止まる可能性があります。

3.3. 回線と電源の冗長化

データセンターにラックを置いただけでは不十分です。外部との接続経路と給電経路が単一であれば、障害点は残ったままです。
回線については、通信事業者を複数使うだけでなく、物理ルートが分かれているかを確認する必要があります。同じ事業者でも途中区間が共通であれば、道路工事や局舎障害の影響を同時に受けることもあるため、下記の項目を確認しておきましょう。
なお、データセンター運営事業者が自社で通信回線網を保有している場合、回線の冗長化やトラブル時の原因切り分けがスムーズになるというメリットがあります。

確認項目 見るべき内容
回線事業者 1社依存か複数社か(マルチキャリア対応か)
引込経路 異経路か同一経路か(物理断への耐性
UPS N+1などの冗長構成になっているか
非常用発電機 連続運転時間が明示されているか、燃料補給の前提は明確か
受電設備 冗長化されているか、保守時でもサービス継続できるか

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3.4. 運用代行と初動対応の整備

遠隔地のデータセンターを使う場合は、現地に運用担当者が常駐していない限り、障害時に駆けつけるまでの時間が復旧の遅れに直結します。
そのため、障害時に現地で対応を行う初動体制を事前に整備しておくことが重要です。

設備があっても誰がどの条件で切り替えるか決まっていないと初動が止まり、承認待ちで時間を失うケースが実務では多くあります。
現実的には、障害時に自社で速やかに対応することはハードルが高いため、データセンター事業者による運用代行を利用することが一般的です。運用代行サービスでは、現地に行かずに依頼できる作業範囲(以下参照)をあらかじめ確認してください。

  • 深夜の障害申告を受けられるか
  • ラック前の目視確認や電源操作は何分程度で着手できるか
  • 保守ベンダー不在時に代理対応できるか
  • 交換用部材の受領・保管・搬入支援はあるか

加えて、年1回でもバックアップへの切り替え訓練・復元テスト・緊急連絡網の発動を実施することが重要です。手順書の不足は、実際に動かして初めて見つかることも多いでしょう。
BCPは作って終わりではなく、動かして改善し続ける運用が前提です。

4. BCP対策で失敗しないデータセンターの選び方【6つの重要ポイント】

BCP用途のデータセンター選定では、「堅牢そうに見えるか」だけでは不十分です。災害や停電が起きた瞬間に業務継続できるかは、建物の強さだけでなく、「立地・電力・回線・建物の設備・運用保守体制・拡張性と費用」まで含めた総合設計で決まります。以下の6つの観点を同じ粒度で確認してください。

No. 確認ポイント 確認すべき内容
1 立地と同時被災リスク 本社・主要拠点との同時被災回避、ハザードマップ確認、アクセス性
2 電力設備と停電対策 UPS・非常用発電機の冗長構成、連続運転時間、単一障害点の有無
3 回線冗長と通信継続性 マルチキャリア対応、物理経路の分散、閉域接続・IX接続の有無
4 建物・防災設備の仕様 免震構造、火災・浸水対策、床荷重、空調冗長化、認証・基準の適用範囲
5 運用保守と初動対応 24時間実作業対応の範囲、障害時の連絡フロー
6 拡張性と費用の見極め 3〜5年の運用イメージでの総額確認、平時の最小構成と本格運用時の比較

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4.1. 立地と同時被災リスク

BCP用途のデータセンターでは、「会社から近いこと」より「同時に被災しないこと」を優先して考える必要があります。

本社・主要工場・情報システム部門が同じ災害圏内に集中していると、データセンターだけ無事でも復旧作業が進みません。確認したいのは単なる距離ではなく、地震・水害・土砂災害・津波・広域停電の影響が本拠点と重なりにくいかという災害特性の分散です。
地震リスクはJ-SHIS(地震ハザードステーション)、水害リスクは自治体ハザードマップで公的データによる一次評価が可能です。なお、本拠点と離れた遠隔地のデータセンターを利用している場合でも、現地スタッフによる機器操作・確認・対応を代行できる「リモートハンドサービス」を活用することで、遠隔地であっても距離による不便さは実務上解消できます。

※ 参照:J-SHIS 地震ハザードステーション

4.2. 電力設備と停電対策

データセンターを選ぶ際に確認すべきは「非常用電源があるか」ではなく、「瞬断なく切り替えられるか」「どれだけ持つか」「単一障害点がないか」の3点です。
たとえば、UPS(Uninterruptible Power Supply:無停電電源装置)があれば、瞬間的な停電や発電機起動までの橋渡しを担い、非常用発電機は長時間の停電に備えることができます。
電力に関する対策を確認する場合は、下記の設計ができるかを見ておきましょう。

  • 受電設備が冗長化されているか
  • UPSと非常用発電機が連携した構成か
  • 非常時の連続運転時間が明示されているか
  • 保守時でもサービス継続を前提にした設計か

4.3. 回線冗長と通信継続性

データが残っていても、ネットワークが途切れれば業務継続は成り立ちません。回線の「本数」だけでなく「経路の分かれ方」まで確認が必要です。

確認項目 見るべき内容 BCP上の意味
回線事業者 1社依存か、複数社か 障害要因の分散
引込経路 異経路か、同一経路か 物理断への耐性
接続先 本社・工場・クラウド・IX(Internet Exchange:インターネットエクスチェンジ) 代替運用の柔軟性
帯域 平時と切替時で足りるか 復旧後の業務品質

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閉域接続・IX接続・データセンター間接続の選択肢があると、復旧シナリオを組みやすくなります。特に有事の際はインターネット回線がアクセス集中により輻輳(遅延)しやすいため、インターネットを経由せずセキュアかつ安定した通信を担保できる「閉域接続」が利用できるかは重要な評価ポイントです。BCPでは最低限つながることよりも、切替後に業務が回る構成が準備されているかを確認することが重要です。

4.4. 建物・防災設備の仕様

建物構造と防災設備は、パンフレットの印象ではなく個別仕様で確認します。
サーバーが継続稼働できるかが問われるため、機器への揺れの伝達を抑えやすい免震構造はBCP用途で強い比較ポイントになります。確認すべき主な項目は以下の通りです。

  • 建物構造:耐震・制震・免震のいずれか(機器保護の観点では免震が有効)
  • 火災対策:高感度検知に加え、IT機器への影響を抑えたガス系消火設備の有無
  • 浸水対策:受変電設備・通信設備などの重要設備の上層階配置、防災区画の有無
  • 床荷重:高集積機器やGPUサーバー導入時は制約になりやすいため将来の機器更改を見据えて確認
  • 空調:冗長構成の有無

認証・基準は、複数のデータセンターを比較する際の共通の物差しとして活用できます。

たとえばJDCC(日本データセンター協会)が定めるFacility Standardは設備の信頼性・可用性を示す等級(ティア1〜4)であり、一般的にBCP用途として推奨されるのは、設備の冗長性が確保され、保守メンテナンス時でもシステムを停止せずに済むティア3相当以上のデータセンターです。さらに、ISMSは情報セキュリティマネジメントの体制整備状況、FISC安全対策基準は金融機関向けのセキュリティガイドラインです。

ただし、「認証を取得しているか」だけでなく「どの範囲に適用されているか」「最新の規格更新に追随しているか」まで確認することが、実態に即した比較につながります。

4.5. 運用保守と初動対応

設備が優れていても、障害発生後の初動に差が出ます。確認すべきなのは、監視・通知だけの対応なのか、リブートや目視確認・媒体交換・ケーブルの抜線/結線・保守ベンダーの入館立ち会い・機器交換の一次対応まで可能なのかという「実作業の範囲」です。

特に遠隔地のデータセンターをBCP拠点とする場合、これらの「リモートハンドサービス(運用代行)」の充実度が、物理的な距離の壁をなくす最大の鍵となります。

契約内容によっては、障害の受付は24時間対応でも、現地での実作業は別途申請が必要なケースがあります。契約前に作業範囲と着手条件を確認することが重要です。
事業者が対応する範囲と利用企業側が対応すべき範囲を曖昧にしたまま導入すると、障害時に「想定していた支援が受けられない」というズレが起きやすくなります。

契約前に以下を確認してください。

  • 深夜障害の受付担当と着手時間
  • ラック前作業(目視確認・電源操作等)の対応範囲
  • 保守ベンダー不在時の代理対応の有無
  • 部材の受領・保管・搬入支援の有無
  • 上記の事業者が対応する作業の手順

4.6. 拡張性と費用の見極め

初期条件だけで選ぶと、数年後に移設・再設計が必要になるケースがあります。
BCP対策はシステム更改・バックアップ容量増加・クラウド連携・拠点追加等と同時に合わせて見直しが発生するため、3〜5年程度の運用イメージで総額と柔軟性を確認することが重要です。

費用はラック利用料・電力・回線・保守オプションの組み合わせで決まります。見積もりの際は、平時の最小構成だけでなく、災害対策を本格運用した場合の構成を分けて比較することが有効です。初年度の安さだけで判断すると、必要な対策を積み上げた際に想定以上のコストになるケースがあります。

5. 【立地が鍵】災害リスクから見るおすすめデータセンターエリア

建物の堅牢性や電源冗長化が整っていても、周辺エリアの災害リスクが高ければ、保守・搬送・復旧の動線まで含めた事業継続性に影響が出ます。立地はデータセンターBCPの実効性を大きく左右する要素です。
BCP向けの立地評価では、自然災害リスク・発災時の交通利便性・同時被災の回避という3つの軸で確認することが基本です。ここからは、主要エリアごとの特長とBCP拠点としての注意点を整理します。

5.1. 立地を見るときの基本軸

BCP向けの立地評価では、以下の3軸を確認することが基本です。

  • 自然災害リスク:地震・水害・土砂災害のハザード確認
  • 発災時の交通利便性:交通アクセス・保守拠点の近さ・部材調達のしやすさ
  • 同時被災の回避:本社・主力拠点との距離・電力エリアの違い

地震リスクはJ-SHIS、水害リスクは自治体ハザードマップで一次評価を行います。都道府県名だけでなく、海抜・河川距離・地盤条件・主要駅からの所要時間まで見ることで、判断がぶれにくくなります。

5.2. 首都圏・近畿圏の特長

通信回線・保守ベンダー・人員確保の面では優位です。ただし、自社拠点が同じ都市圏に集中している場合、地震や大規模停電・交通遮断の影響を同時に受ける可能性があります。
都市圏のDCをBCP拠点として選ぶなら、異なる変電系統・浸水リスクの低い区画かどうかという点まで確認しましょう。
メインサイト向きの立地とDRサイト向きの立地は、必ずしも同じではありません。

5.3. 北海道・東北の特長

冷涼な気候による空調効率と、首都圏から十分な距離を取りやすい点が強みです。
ただし、冬季の気象条件は無視できません。降雪や路面状況の悪化で現地作業や輸送に影響が出ることがあります。保守の現地常駐体制やリモートハンドの範囲まで確認しておくと評価が安定するでしょう。

5.4. 中国・四国・九州の特長

九州・福岡は、遠隔地分散とアクセス性のバランスが取りやすいエリアです。新幹線・空港・都市機能が近接しており、主要都市からの到達性を確保しやすい特長があります。西日本エリア全体として、東日本拠点のバックアップ先として検討しやすい地域といえるでしょう。

なお、中国・四国はエリアによって台風・土砂災害への備えが必要ですが、台風は地震と異なり事前予測が可能なため、耐風性能・浸水対策(ハザードマップ外の立地・高床構造等)が整った施設を選ぶことで被害リスクを大幅に低減できます。

5.5. おすすめエリアの考え方

おすすめエリアは全国一律では決まりません。首都圏に本社がある企業なら西日本や東北への分散に合理性が出やすく、関西圏の企業なら九州や関東北部など、同時被災しにくい方向で考えるのが基本です。
中でも九州(特に福岡)は、首都圏や関西圏における「南海トラフ地震」などの広域太平洋側リスクと同時被災しにくく、かつ交通アクセスが良いため、DR(災害復旧)サイトとして近年非常に高い注目を集めています。

比較軸 確認ポイント
地震リスク 活断層、想定震度、地盤条件、立地するプレート
水害リスク 洪水・内水・高潮・津波想定、海抜
交通利便性 空港、新幹線、高速道路、保守拠点
分散効果 本社・主力工場・メインDCとの距離、電力エリア
運用性 リモートハンド、部材調達、24時間対応体制

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立地選定で見落とされやすいのは「平常時の便利さ」に引っ張られることです。BCPのためのデータセンターであれば、緊急時に使える場所かどうかを基準に評価してください。


各エリアの詳細な立地情報については、以下もあわせてご覧ください。

福岡を拠点とするQTnetのデータセンター

上記の比較軸から検討すると、QTnetが福岡に運営するデータセンターは有力な選択肢の一つです。QTnetは九州を拠点とする通信事業者として、データセンター・ネットワーク・クラウド接続・運用代行を一体で提供しており、BCP設計の要件整理から相談できます。

評価軸 確認ポイント
地震リスク 活断層、想定震度、地盤条件、立地するプレート
交通利便性 新幹線・空港・都市機能が近接。首都圏・関西圏からの日帰りアクセスが可能
ファシリティ 免震構造・電源空調冗長化・非常用発電機72時間無給油連続運転対応
サポート 24時間365日常駐技術者による運用代行。遠隔地でも距離のハンデを解消
接続性 閉域接続・クラウド接続・IX接続をワンストップで提供。複数事業者またぎによる障害切り分けの複雑さを解消

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※ 参照:全国地震動予測地図2020年版(地震調査研究推進本部)

6. 導入事例:株式会社フォーサイトさまのBCP対策

BCPの成否は設備の堅牢性だけでなく、業務要件に合った設計ができているかで決まります。ここでは、QTnetデータセンターを活用してBCP対策を実現した株式会社フォーサイトさまの事例を紹介します。

6.1. 課題:750万本の講義動画(資産)のバックアップ対策の整備

難関資格に特化した通信講座を展開する株式会社フォーサイト(東京都文京区)では、20年以上にわたって制作した講義動画の累計本数は、750万本規模にのぼり、データ容量は8TB以上に及ぶ状況でした。これらの膨大なデータをすべて本社4階のサーバールームで管理しており、抜本的なバックアップ対策の必要性を以前から痛感していました。

2024年1月の能登半島地震を機に、データセンターの検討・選定作業を本格的に開始しました。

6.2. 選定理由:全国数社の候補からQTnetを選んだ3つの理由

まず首都直下地震の影響を受けない遠隔地の事業者を中心に候補をピックアップし、北海道や中四国など全国数社の中から最終的に選ばれたのがQTnetでした。選定の決め手は以下の3点です。


① 地震をはじめとする自然災害リスクが際立って低い福岡の立地条件

「全国地震動予測地図2020年版」(地震調査研究推進本部)によると、福岡県で今後30年間に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率は相対的に低い水準にあります(地図上では0.1〜6%の確率帯に該当)。


② 不測の事態に自社エンジニアが現地に駆けつけやすいアクセス性

空港にも新幹線の駅にも近く、東京本社からはもちろん、名古屋支店からの時間距離でも理想的な立地です。数十分単位で行ける距離ではないものの、ディスクの交換や電源の管理など現地作業はリモートハンドサービスへの依頼で対応できる見通しも選定の後押しになりました。


③ 担当者の対応姿勢

初回資料請求時のレスポンスの速さと対応の丁寧さ、初回打ち合わせで検討ポイントを端的に整理したレジュメを用意していたこと、デメリットも含めて誠実に説明する姿勢が信頼感につながりました。

6.3. 導入:スムーズな移設と今後の展開

2024年11月にQT PRO データセンターサービスの導入を決定。2025年初頭にかけて、まず契約書類・事務関連のファイルサーバー、次いで講義動画データの移設が完了しました。現地見学から移設作業まで、ファシリティ担当者による丁寧なサポートにより、ハウジングサービス利用が初めての同社でもスムーズに進められました。

2026年をめどに、福岡をプライマリーセンター・本社サーバールームをセカンダリーセンターとする管理体制への移行を計画しています。今後は運用監視サービスや運用代行サービスの活用も検討中です。

6.4. この事例から読み取れること

フォーサイトさまの事例が示すのは、BCP対策は「設備を選ぶ」だけでは完結しないという点です。守るべきデータの性質(動画・教材の大容量データ)を起点に、立地・ファシリティ・アクセス性・運用サポートを総合的に評価し、段階的に移設を進めた進め方は、多くの企業が参考にできる実践例といえるでしょう。

自社に当てはめるなら、「何が止まると困るか」「誰が現地対応するか」「将来の拡張にどう備えるか」を起点に、設計することが基本です。

さらに詳しい事例については、以下の記事をご参照ください。

7. データセンターBCPに関するよくある質問

BCPとDRは何が違いますか?

BCPは事業全体の継続を扱う広い計画で、人員体制・代替拠点・連絡手段・業務優先順位まで含みます。DRは主にシステムやデータの復旧に焦点を当てた対策です。データセンターの活用はDRの中核になりやすいですが、それだけでBCP全体が完成するわけではありません。システム復旧後に誰がどこで業務を再開するかまで決めて、初めて実効性が出ます。

どの業務から対策すべきですか?

止まると売上・法令対応・顧客対応に直結する業務から優先することが基本です。基幹システム・受発注・決済・顧客情報参照・社内外の連絡基盤は優先度が上がりやすい領域です。全業務を同じ水準で守ろうとすると費用も運用負荷も膨らみます。業務ごとにRTO(目標復旧時間:どれだけの時間で業務を再開するか)・RPO(目標復旧時点:どの時点までデータを戻せればよいか)を分けて考えると整理しやすくなります。

クラウドだけでもBCP対策になりますか?

クラウド利用はBCP対策の強力な選択肢になり得ます。ただし、クラウド事業者との責任分界点を理解しておく必要があります。クラウドに置けば自動的に十分なBCPになるわけではなく、複数のリージョンをまたいだ冗長設計や、ネットワーク切断時の代替手段はユーザー側で設計しなければなりません。また、大容量データの保管コストや、独自機器(レガシーシステム等)の制約を考慮し、基幹システムはデータセンター、変動の激しいシステムはクラウドといった「データセンターとクラウドを組み合わせたハイブリッド構成」が、コストと安全性の観点で最適な解となるケースが増えています。

データセンターは遠いほどよいですか?

遠隔地配置は同時被災の回避に有効です。ただし、遠ければ遠いほどよいとは限りません。現地常駐の運用代行サービスを活用することで、距離によるアクセス課題は解消しやすくなります。同一災害圏を避けつつ、必要な保守体制を維持できるかが判断軸です。交通アクセス・保守ベンダーの拠点・回線引き込み条件まで含めて確認してください。

費用はどのくらいかかりますか?

費用は構成差が大きく、固定的な相場を一言で示すことは適切ではありません。一般的には「初期費用(機器移設・配線工事など)」と「月額費用(ラック利用料・電力使用料・回線費用・運用代行費など)」に大別されます。見積もりでズレやすいのは月額費用よりも初期移設費と運用オプションです。
機器移送・設置・配線・休日作業・障害対応体制まで含めて確認すると、想定外の増額が出にくくなります。

年1回の訓練だけで十分ですか?

不十分になりやすいです。BCPは文書より運用が重要であり、切替訓練や連絡訓練を行わないと、いざという場面で手順が機能しません。特にバックアップからの復元・代替回線への切替・担当者不在時の権限移譲は、机上確認だけでは詰まりやすい部分です。システム更新や組織変更のたびに内容を見直す運用が欠かせません。

8. まとめ

BCP対策としてのデータセンター活用は、設備の強さだけで決まりません。重要なのは、自社の許容停止時間や復旧目標に合った構成を選び、立地・電源・回線・運用体制を実務レベルで確認することです。
遠隔地バックアップを検討している、既存のオンプレミス環境を災害対策込みで見直したい、クラウドとデータセンターを組み合わせたBCP構成を整理したい場合は、早い段階で要件を言語化しておくと判断が進みます。
QTnetでは、福岡のデータセンター・閉域接続・クラウド・運用支援を組み合わせた構成相談に対応しています。データセンターBCPの具体的な進め方を整理したい場合は、必要要件の確認から相談いただけます。