データセンターとは?
クラウドとの違いとメリット、選び方
公開:2021年8月27日
更新:2023年8月7日
「自社内にサーバーやIT機器を設置するスペースがない」、「安全な場所にデータを保管したい」などの悩みを解決しようとした際に便利なのがデータセンターです。しかし、データセンターの具体的なサービスについて詳しく知らないという方も多いのではないでしょうか。 今回は、データセンターの概要と、クラウドとの違いやメリット、データセンターを選ぶ際のポイントをまとめていきます。
目次
1. データセンターとは
データセンターとは、サーバーやネットワークなど顧客のIT機器を設置する場所を提供する施設です。IT機器の設置場所に加え、機器を安定的に運用するために必要な環境やサービスも提供しています。
1.1. 情勢変化と5G時代におけるデータセンター
テレワーク・ハイブリッドワークの普及や5Gの台頭などの変化により、各企業におけるデータ通信量は急激に増加しています。各企業は急増するデータ通信に耐え得るインフラ設備や人的リソースの確保を求められていますが、技術も社会情勢も大きく変化する時代のなか、どれだけの人的リソースを確保すべきか予測することは非常に困難です。また、南海トラフ地震のリスクや毎年起こる自然災害から重要なデータを守る備えは必要不可欠です。そうした状況に対応するためにも、最近はIT機器の物理的設置場所と安定運用の環境を提供し、人的リソースの確保を手助けする「データセンター」の需要が高まっています。
1.2. データセンターの役割
データセンターは、企業がIT機器を運用するために必要な物理的スペースと電源や空調設備などを提供し、運用にかかる負担を軽減する役割を担っています。また、データセンターはセキュリティ対策のため詳細な場所は非公開となっており、物理的な攻撃を受けるリスクを軽減する役割もあります。セキュリティ対策以外でも、災害時、万が一自社が被災した場合、遠隔地のデータセンターを利用することで、システムが同時被災を受けず事業継続ができるというBCP・DR対策としての側面の役割もあります。
1.3. データセンターを契約するには
データセンターを利用するには、データセンターを運用している事業者と契約することが必要です。事業者によって1ラックあたりの料金プランや電源系統、オプション機能などが異なるため、目的や要件にあわせた料金プラン・オプションを選択しましょう。
2. データセンターの「ハウジング」とは
ハウジングとは英語の「House」に由来する言葉で、ITインフラ領域では、データセンターが提供するサーバーやネットワーク機器などを設置するためのラック、および周辺設備(電源や通信回線など)を貸し出すサービスを指します。
2.1. ハウジングを利用するメリット
ハウジングのメリットは、ラックごとスペースを借りられるため、機器のマウントや電源・通信回線接続の自由度が高い点です。オンプレミスで運用している機器構成をそのまま移設できるため、企業独自で構成しているシステムでも簡単に活用できます。運用負担を減らしつつ機器構成はそのまま維持したい場合は、ハウジングを利用すると良いでしょう。
2.2. コロケーションとの違い
コロケーションとは、ハウジングと同様にデータセンターが提供する、サーバーやネットワーク機器などの設置スペースの貸し出しサービスです。 両者の違いは、ハウジングがラック単位の小規模なスペースの貸し出しであるのに対し、コロケーションは部屋単位など大規模なスペースの貸し出しとなる点にあります。
ハウジングは幅広い企業で活用される一方、コロケーションは大規模な機器設置が必要となる通信事業者などが利用する場合が多いでしょう。
3. データセンターとクラウドの違い
データセンターとクラウドの大きな違いは、ハードウェア・ソフトウェアを誰が準備・管理するかにあります。 データセンターはIT機器の設置場所を提供する施設のため、基本的にハードウェアやソフトウェアは顧客自身が準備・管理する必要があります。
一方クラウドは、インターネットなどのネットワークを経由してハードウェア・ソフトウェアの機能を利用することができるサービスです。サーバーなどのハードウェアやソフトウェアはクラウドサービス事業者が準備するため、システムを一から購入・構築する手間や作業時間を削減できます。システム環境を柔軟に構築できるのはデータセンター、機器の購入・構築の負担を軽減できるのはクラウド。それぞれの特徴を比較し、データセンターかクラウドかを選ぶのがよいでしょう。
なお、クラウドサービスのサーバーはほとんどの場合データセンターに保管されているため、クラウドサービス利用者は間接的にデータセンターを利用していると言えるでしょう。
3.1. クラウドサービスと比較した場合のデータセンターのメリット
続いて、クラウドサービスと比較した場合のデータセンターのメリットを見てみましょう。
3.1.1. カスタマイズ性の高さ
クラウドサービスも年々機能やカスタマイズ性が拡張されていますが、IT機器やネットワークを自社独自に選択できるため、より個別にカスタマイズできるのはデータセンターであるといえるでしょう
3.1.2. システム障害への早期対応
システムに障害が発生した場合、クラウドサービスが障害復旧に要する時間はクラウドサービス提供事業者の対応にゆだねられます。一方、データセンターであれば自社での復旧対応となるため、運用体制があればクラウドサービスよりも早期に対応できる場合が多いと考えられます。
ただし、データセンターが遠隔地にある場合は、ハードウェア故障などが発生してもスムーズに復旧できるよう、データセンター事業者と保守・運用の体制を整えておくことが必要です。また、クラウドサービスを利用する場合には提供事業者のSLA(サービス品質保証)をよく確認しておくことが重要です。
3.1.3. 機密情報の自社管理
企業によっては、情報セキュリティポリシーにより顧客の個人情報など機密性の高い情報をクラウドサービス上に保管できない場合があります。またクラウドサービスを狙った攻撃も増えており、情報漏洩が大きなインシデントにつながるリスクも。特に機密性の高い情報はクラウドサービスではなくデータセンターで自社管理をする、という選択もあります。
3.1.4. 災害などに備えた地方へのリスク分散
クラウドサービスで利用している機器は管理の関係上、首都圏や都市部に設置されることが多い傾向にあります。首都圏や都市部に本社がある場合、災害が発生した際にどちらも被害を受ける可能性があります。また、顧客はクラウドサービスに利用されている機器がどこに設置されているか把握できないため、災害発生によるリスク分散を意図的におこなうことは困難です。
一方、データセンターであれば、災害に備えて遠隔地にバックアップ機器を設置しておくという選択ができ、災害によるリスク分散の面では大きなメリットがあります。
3.2. 検討の際に知っておきたいクラウドサービスのメリット
データセンターの利用はクラウドサービスの利用と比べ、機器や情報管理の柔軟性の面でメリットがあります。対して、機器や情報管理の柔軟性をそこまで重視しないのであれば、クラウドサービスを利用したほうが運用にかかる負担が少なく場合があります。また、自社で機器を準備する費用を抑えられることや契約してすぐに利用を開始できることなどはクラウドサービスの大きなメリットです。
機器に必要な要件や管理する情報などにあわせて、データセンターを利用するのかクラウドサービスを利用するのかを検討するのがよいでしょう。
4. 自社運用と比較した場合のデータセンターのメリット
4.1. IT機器に適した環境
IT機器を安定して正常に稼働させ続けるには、温度や湿度の管理が必要になります。自社で管理しようとするとコストや手間がかかるほか、「空調が停止してしまっていた」など予期せぬトラブルが起こるリスクがありますが、データセンターではIT機器に最適な環境を維持してくれるため、機器の停止の心配なく利用し続けることが可能です。また、機器のサイズや重量によって適切なラックを選ぶことができ、機器の組み立てや分解に利用できる作業スペースや関係者が自由に利用できる休憩スペースも備えられているなど、設備や環境面でのメリットがあります。
4.2. 電力供給の安定性
データセンターでは、機器の稼働に必要な電力を安定的に提供してくれます。企業ごとに供給電力を選択でき、常用と非常用で冗長化することもできるため、安定した稼働環境が得られます。
4.3. 設備投資や人件費などのコスト削減
安定した機器運用には、先述した通り機器の発熱を抑える空調設備や冗長用の非常用電源の準備などのコストがかかります。適切な空調の管理や非常用電源の確保にはかなりのコストがかかるため一般的な企業では長期的な導入が難しく、データセンターを利用したほうが設備投資や人件費などのコストが低くなる場合があります。
4.4. 高度なセキュリティ体制
セキュリティ対策のためデータセンターの詳細な場所は公開されておらず、契約者以外は市区町村レベルでの所在しか知ることができません。またデータセンターへの入退室は事前入室申請や身分証明書の提出が必要となるなど厳重に管理されており、高度なセキュリティ体制下に機器を設置しておくことができます。
4.5. 地震などの災害対策
データセンターはIT機器の設置に特化した施設のため、地震や火事などの災害に強い建物設計がなされています。耐震・免震構造や厳重な火災検知に加え、消火時にもIT機器が壊れないよう配慮されており、自社に比べて災害に強い環境下で機器を設置・運用することが可能です。
4.6. ゼロトラストセキュリティの実現
セキュリティ対策を依頼できるデータセンターを利用すれば、専任の技術者が24時間365日体制でセキュリティ監視を行ってくれます。また、自社内ではない第三者の専門家の視点でセキュリティ対策を提案・実施してくれるため、ゼロトラストセキュリティの実現にも繋がります。
ゼロトラストについては、以下の記事で詳しく解説しています。
5. クラウド・ハウジング・コロケーション・レンタルサーバーの違い
クラウド、ハウジング、コロケーション、レンタルサーバーは、利用単位・管理形態・サーバー所有者の3つの観点でそれぞれ違いがあります。
利用単位 | 管理形態 | サーバー所有者 | |
---|---|---|---|
クラウドサーバー | サーバー、ストレージ単位 | 運営会社が管理 | 運営会社 |
ハウジング | データセンターのラック単位 | 自社で管理 | 自社 |
コロケーション | データセンターのスペース単位 | 自社で管理 | 自社 |
レンタルサーバー (ホスティング) | サーバー単位 | 運営会社が管理 | 運営会社 |
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ハウジングとコロケーションは、いずれも管理形態とサーバー所有者が自社であり、違いは利用単位の違い(ハウジングはラック単位、コロケーションはスペース単位)です。
一方、クラウドサーバーとレンタルサーバー(ホスティング)は、管理形態とサーバー所有者がいずれも運営会社となります。レンタルサーバー(ホスティング)はサーバー単位での利用が基本ですが、クラウドサーバーではストレージ単位での利用もできます。
6. データセンターの選び方・比較検討のポイント
ここからは、どのような基準でデータセンターを選ぶべきかを解説します。ここで紹介する各ポイントを抑え、最適なデータセンターを見つけましょう。
6.1. データセンターの場所・立地
「障害からの復旧時間を短くすること」を重視するのであれば自社や担当ベンダーの会社に近くアクセスが良いエリアを、「災害時のリスク分散」を重視するのであれば自社とは異なる電力エリアにあるデータセンターを検討するのがおすすめです。データセンターは基本的には地震などの災害に強い場所・立地にあることが多いですが、本当に災害に強い場所にあるか事前に確認をおこなうとよいでしょう。
6.2. セキュリティ対策
入館時にどのような情報が必要となるのか、機器設置場所にアクセスするまでに複数のセキュリティ対策がなされているかなどを確認しましょう。セキュリティ対策が厳重であるほど安心して利用できます。
6.3. 災害・非常時の対策
電力設備や通信回線の冗長化、停電時の電力設備(無停電電源装置・自家発電装置など)、火災時の検知・消火システムを事前に確認しておきましょう。データセンターによっては災害時の対策がオプションとなっている場合もあるため、どこまでサポートしてもらえるかを確認したうえで選定することが重要です。
6.4. 料金
データセンターはサービスによってさまざまな料金プランやオプションが用意されています。まずは条件や必要なサービス・サポートを明確にしたうえで料金体系をチェックしましょう。
6.5. 空きスペース・ラックの有無
設置する機器によって、確保すべきスペースやラックのサイズが異なります。設置する機器にあわせて最適な収納スペースを借りられるか事前に確認しましょう。またネットワークのケーブルはメタルなのか光なのかなどもあわせてチェックが必要です。
7. データセンターの料金体系
データセンターの利用にかかる主な料金を解説します。
7.1. 初期費用
まずは初期費用がかかります。これはデータセンターを利用するにあたって、ラックの確保や契約手続きなどにかかる費用です。
7.2. ラック使用料
ラックの使用にかかる料金が発生します。データセンターによって異なりますが、一般的にはラックの使用スペースや電力容量などに応じた月額料金となります。
7.3. 電気・回線使用料
機器で利用する電気・回線にかかる料金がかかります。電気使用料は月額料金に含まれる場合が多いですが、従量課金制の場合もあり、冗長電源にするかどうかで料金が変わるケースもあります。回線使用料は、帯域幅やベストエフォート・ギャランティ・バーストいずれのタイプを選択するかによって異なります。
7.4. オプション費用
別途、基本サービス外のオプションを利用するとオプション費用がかかることがあります。データセンターによっては、設置・運用・監視・故障対応のマネージドサービスやセキュリティ対策、機器レンタルなど、さまざまなオプションを提供しています。プランに含まれている場合もあるため、事前に確認しましょう。
8. QT PROのデータセンターサービスで課題を解決
QT PROが提供するQT PRO データセンターサービスは、ここまでで解説したデータセンターのメリットを網羅しています。
まず、データセンターの場所は福岡にあります。利便性が高くビジネスの主要地でありながら、災害リスクが低い立地が魅力です。主要ベンダーの保守拠点も多く、保守部品の調達やエンジニアの確保も容易です。
また、建物は免震構造を採用しており、電力設備や通信回線の冗長化、災害時の電力の供給停止に備えた無停電電源装置や非常用発電機を設置しています。さらに、建物内のセキュリティを確保するため複数のセキュリティ設備で人の出入りを監視・制限しています。
24時間365日体制で専任の技術者が運用をおこなっているため、急な障害などに対しても迅速な保守対応が可能です。
他にも、IXへの接続サービスであるQT PROインターコネクトを利用することで、低コストかつ低遅延・高信頼のインターネット環境を整えることができます。
その他に、QT PROではさまざまなネットワークサービスをワンストップで提供しています。データセンターの利用を検討される際には、ぜひQT PROのサービスのご活用を検討してみてください。
9. まとめ
今回は、データセンターの概要と、クラウドとの違いやメリット、データセンターを選ぶ際のポイントについて解説しました。。
データセンターとは、サーバーやネットワークなど顧客のIT機器を設置する場所を提供する施設です。データセンターを利用することでハードウェアやソフトウェアを適切な設備で管理でき、柔軟なカスタマイズや迅速な障害復旧、災害に備えたリスク分散が可能となります。
この記事を参考に、データセンターとクラウドサービスの違いを抑え、安定してIT機器を運用できる環境を整えましょう。