第3回 営業マンこそテレワーク!!という5つの理由

  • 本記事は2017年12月のメールマガジン配信記事です。

さて、前回は「テレワークの失敗例」についてお送りいたしました。
現場の反対意見による立ち消え」や、「トップダウンでうまく機能しなかった」こと、この2つが大きな原因でした。これらの対抗するために必要なのは、3つの部署を味方につけることが重要ということがわかりました。
3回目になる今回は「営業マンこそテレワーク!!」についてお送りします。
営業というと、社外で既存顧客との信頼関係構築、新規開拓など常に外回りしているイメージ。そんな営業職がテレワークを行うことで生産性アップ、売上アップなんてできるものでしょうか・・・。
テレワークの第一人者、森本登志男さんにじっくりとお話を伺いました。では、今回もお付き合いください。

1. テレワークは誰もが利用できる働き方のバリエーションのひとつ

テレワークは誰もが利用できる働き方のバリエーションのひとつ

「テレワークを福利厚生の枠の中だけに押し込めてはダメ」
テレワークの第一人者、森本登志男さんは著書や講演でそう強調する。
多くの人は「育児・介護中の社員=在宅勤務=テレワーク活用」という福利厚生の図式を思い浮かべるはずだ。なぜダメなのだろう。その理由は、育児・介護のための在宅勤務をやる手段として使うだけだと、テレワークは事情のある社員のみが利用する〝特殊な働き方〟になってしまうからだ。
「働き方のバリエーションのひとつとして誰もが利用できるようにするべきなのです」と森本さん。
そう力説するのには、テレワークが営業の効率化を生み、企業の利益を伸ばす効果があるからだ。
それを示すデータがある。総務省の2016年度通信利用動向調査によると、テレワークを実施している企業は実施していない企業よりも労働生産性が1.6倍高いという結果が出ているのだ。労働生産性とは営業利益と人件費と減価償却費を足した数字を従業員数で割ったもので、労働者1人当たりの生み出す成果である。
つまりテレワークを利用すると、効率よく働けるということを示している。

2. テレワークがもたらす5つのメリットとは

森本さんによると、テレワークがもたらす経営上のメリットには次のようなものがあるという。

テレワークがもたらす5つのメリットとは
  1. モバイルワークで報告書作成などを済ませれば会社に立ち寄る必要がなくなるため、顧客と接する時間をより多く確保できる
  2. 仮想デスクトップを導入すれば外出先の端末からも資料等がダウンロードできるため、顧客の疑問や要望によりスピーディーに応えられる
  3. 文書を電子化することで職場のペーパーレス化が進み、用紙・印刷費のコストダウンにつながる
  4. 在宅勤務やフリーアドレス化が進むと職場の必要なフロア面積が減り、フロア貸料の削減につながる
  5. 在宅勤務やサテライトオフィスでは来客や電話応対がないため業務に集中できる

もちろん福利厚生面でもメリットはあるが、それは次回以降に説明したい。

  • 仮想デスクトップ=どのPCからでも自分のPCデスクトップ環境を利用できる仕組み
  • フリーアドレス=社員が個々のデスクを持たないオフィススタイル
  • サテライトオフィス=本社から離れた場所に設けられ、通信などの職場環境を備えた衛星型オフィス

3. 【実例1】経営改革の手段としてテレワークを活用
〜カルビー

森本さんの著書「あなたのいるところが仕事場になる」(大和書房刊)では、経営改革の具体例が取り上げられている。菓子・食品メーカーのカルビー株式会社だ。
同書によると、カルビーはトップの交代を機に2010年から経営改革を断行。
テレワーク関連の改革を挙げると

  1. フリーアドレス制度
  2. 営業部門の社員が会社に立ち寄らない直帰直行の実施
  3. 在宅勤務制度を導入

改革は多岐にわたるためテレワークだけの効果ではないだろうが、同社の17年3月期の売上高は2,524億2,000万円で10年3月期の1.7倍、営業利益は288億4,100万円で3倍にそれぞれ伸びている

【実例1】経営改革の手段としてテレワークを活用〜カルビー

森本さんは「同社の働き方、仕事に対する概念を変えることが企業の成長につながった。そのために必要となる手法が、在宅勤務やモバイルワーク、フリーアドレスであった」と分析。
テレワーク導入自体が目的ではなく、企業が改革・改善の目標や目的を明確にし、それを実現する手段としてテレワークを導入したことが成功の鍵だと分析する。手段が目的化しないということである。

4. 【実例2】「持ち帰り対応」や「復命書」作成時間が半減〜佐賀県庁

企業の事例ではないが、森本さんが佐賀県庁で進めたテレワークの効果も取り上げたい。

【実例2】「持ち帰り対応」や「復命書」作成時間が半減〜佐賀県庁

2013年、一部の職員に行ったモバイル推進実証事業では、農業改良普及センター職員が農家を訪問して難しい質問をされた場合、 従来ならいったん持ち帰って詳しい指導員に尋ねるなどして後日に回答していたが、モバイルワーク導入後はタブレット端末で詳しい指導員を呼び出して、その場で答えられるようになった。
導入前の「持ち帰り対応」の回数はモバイルワーク導入後には半減したという。
また、出張などの際に書く「復命書」の作成時間も、従来は自席に戻って作成していたのが、モバイルワークで移動中などの隙間時間を活用することで、作成時間が半分に削減されたという成果も出た。こうしたやり方は県庁職員を営業社員に置き換えるだけで、企業でもそのまま効果が期待できるケースではないだろうか。
テレワークを導入しない企業の7割以上がその理由として「テレワークに適した仕事がないから」と回答している(先述した2016年通信利用動向調査)。しかし、森本さんは「ほとんどの企業に総務、営業はあるはずです。特に、営業こそテレワークの最前線に近い職種であり、向いている職種です」と強調し、こう呼びかける。「テレワークでどんどん生産性を上げていきましょう」

あとがき

森本さんが「営業こそテレワークに適している」と話されている意味がよくわかりました。
持ち帰って回答することが多かった顧客の疑問や質問は、ICTを活用したらその場で対応できますし、会社に帰る時間を顧客対応にあてることもできるんですね。
テレワークは「在宅勤務」というイメージがありますが、パソコンやインターネットを使って離れた場所で仕事をすることを指しています。外にいる営業が生産性を高めるために一番適しているのが「テレワーク」なんですね。
第4回は「二者択一から解放されるテレワークとは?」高齢化社会が進む日本、介護を理由に「離職」や「休職」を選択する方も多いと聞きます。また、出産・育児によって社会復帰が難しい方も。働き続けたいと思う人々が離職や休職をしなくても、仕事を続けていくことができる鍵はじつは「テレワーク」なんです。
次回も森本さんに興味深い話を聞いていきます。お楽しみに!