QT-GenAI ブログ
LGWAN環境で使える生成AIサービスとは?メリットや自治体の導入手順を解説

自治体のネットワークは総務省のガイドラインにもとづき、扱う情報の機密性に応じてマイナンバー利用事務系、LGWAN接続系、インターネット接続系の三層の対策「三層分離」で構成されています。このうち、LGWAN接続系を担うのがLGWAN(総合行政ネットワーク)です。
自治体では行政文書などを扱うため、セキュリティを担保できるLGWANに対応した生成AIサービスの利用が求められています。閉域ネットワーク内で安全性を確保しながら生成AIを活用でき、行政DXの推進にも役立ちます。
この記事では、LGWANの概要から生成AIと組み合わせるメリット、導入時の注意点や進め方まで分かりやすく解説します。
30秒で読める本記事の要点
- LGWANとは何か
LGWAN(総合行政ネットワーク)とは地方公共団体間を安全に相互接続する閉域ネットワークのことです。 - LGWAN対応生成AIサービスのメリット
LGWAN内で生成AIサービスを活用すれば、業務効率化とセキュリティ確保を両立できます。閉域環境下でも日常業務の中で自然に利用しやすくなります。 - LGWAN対応の生成AIサービスの選定ポイント
LGWAN対応のほか、学習データ利用の有無やRAG機能、伴走支援体制まで総合的に評価することが大切です。
監修者の紹介

株式会社QTnet AI事業部AIシニアスペシャリスト
一般社団法人生成AI活用普及協会(GUGA)協議員
ふくおか電子自治体共同運営協議会DXプロデューサー(生成AI)
九州産業大学 AI講座 非常勤講師
佐伯和広
1. LGWANは「三層分離」の一つ
地方公共団体(自治体)では、総務省のガイドラインに基づき、「三層分離」と呼ばれるネットワーク構成を講じています。
<自治体の三層分離>
- マイナンバー事務系:社会保険や税金関係、戸籍・住民票など個人番号を扱う業務に用いられる
- LGWAN接続系:財務会計、人事給与、庶務事務などの庁内業務や他自治体との情報連携に用いられる
- <インターネット接続系:メール送受信や広報業務など外部通信が必要な業務に用いられる
原則として各系統の端末は使い分けられ、LGWAN接続系の端末からインターネットへ直接アクセスできない構成となっています。
■自治体の三層分離

※本図は、三層分離における「α'モデル」の構成例です。
このほかβモデル・β'モデル等があり、自治体によってネットワーク構成は異なります。
2. LGWANとは、地方公共団体間を安全に相互接続する閉域ネットワークのこと
LGWAN(Local Government Wide Area Network)とは、全国の地方公共団体間を安全に相互接続する閉域ネットワークのことです。行政文書など機密性の高いデータを扱う業務を支える情報インフラとして運用されています。
■LGWANのイメージ

LGWANは専用回線を利用して構築されており、一般的なインターネットとは物理的に分離されている点が特徴です。そのため、外部からの不正アクセスや情報漏洩のリスクを抑えながら、安全な情報共有や行政サービスを提供できます。
また、LGWANはセキュリティを確保するだけでなく、行政DXを支える基盤としても重要な役割を担っています。
3. 自治体でLGWAN対応生成AIサービスのニーズが高まる理由

生成AIは自治体業務の効率化に役立つ一方で、自治体特有のネットワーク構成やセキュリティ要件への対応が欠かせません。そのため、安全性と利便性を両立できるLGWAN対応の生成AIサービスへの関心が高まっています。
3.1. 自治体で高まる生成AIのニーズ
少子高齢化による人手不足や行政サービスの高度化を背景に、自治体では生成AIを活用した業務効率化への期待が高まっています。なかでも以下のような、自治体や行政機関内の文書を参照しながら行う業務への活用が挙げられます。
<自治体における生成AI活用例>
- 窓口相談の支援:生活保護や福祉分野など、参照資料が膨大な業務で、必要な情報を素早く提示する
- 業務マニュアルの活用:異動直後の職員や新任職員が、庁内ナレッジを自ら調べられるようにする
上記の業務で参照する資料は、いずれもLGWAN接続系のファイルサーバーや庁内システムに保存されている行政文書です。
また、職員が日常的に使う業務端末はLGWAN接続系に配置されているケースが多く、AIを使うたびに端末やネットワークを切り替える運用では、全庁的な定着は望めません。「いつもの端末で、いつもの業務の流れのまま使えること」が、自治体における生成AI活用には必要です。
生成AIについては、下記の記事を参考にしてください。
3.2. 一般的なクラウド型の生成AIでは対応できない
GPTをはじめとするクラウド型の生成AIは、インターネット経由で利用するサービスが一般的です。そのため、入力したデータはインターネットを通じて外部サーバーで処理され、サービスによってはAIの学習に利用される可能性があります。
また、地方公共団体(自治体)では、三層分離を講じており、LGWAN接続系の端末からインターネット上の生成AIサービスへ直接アクセスできないケースが一般的です。そのため、現場では生成AIを利用したくても、ネットワークやセキュリティの制約によって利用しにくいという課題があります。
そこで、AI側をLGWAN環境内に置き、LGWAN接続系の業務端末からそのまま利用できる生成AIサービスが求められているのです。
4. LGWANに対応した生成AIサービス導入のメリット
LGWANに対応した生成AIサービスは、安全性を確保しながら自治体業務にAIを活用できる点が大きなメリットです。業務効率化だけでなく、セキュリティの確保や行政DXの推進にも繋がります。ここでは、主なメリットを紹介します。
■LGWANに対応した生成AIサービス導入のメリット

4.1. 生成AIによる業務効率化
LGWAN対応の生成AIサービスを活用すれば、メール文案、議事録の要約、企画書のたたき台作成など、日常的に発生する文書作成業務を効率化できます。職員の作業時間を短縮できるため、住民対応や企画立案など、本来注力すべき業務に時間をあてやすくなります。
また、RAG(Retrieval-Augmented Generation)を活用すると、条例や例規など庁内文書をもとに回答を生成することも可能です。「住民からの問合せ対応の迅速化」「回答品質の均一化」に繋がります。
さらに、属人化していた業務ノウハウをAI経由で共有でき、新任職員の育成や業務の標準化にも活用できます。
生成AIを活用した業務効率化については、下記の記事を参考にしてください。
4.2. 安心のセキュリティ対策
LGWAN-ASP(LGWAN経由で各種サービスを提供する事業者・サービス)を経由することで、LGWAN環境の業務端末からシームレスかつ安全に生成AIを利用できます。
さらに、入力データをAIの学習に利用しない設計やテナント分離など、サービス側のセキュリティ機能を備えたサービスを選ぶことで、より安全な運用が可能です。
自治体ごとに独立した環境で提供される点も、他自治体とのデータ混在を防ぐ上で有効です。
生成AIのセキュリティ対策については、下記の記事を参考にしてください。
4.3. いつもの業務環境で生成AIを利用できる
LGWAN対応の生成AIサービスであれば、LGWAN接続系からインターネット接続系へ切り替えることなく利用できます。そのため、職員は普段利用している業務環境のまま生成AIを活用でき、業務の流れを止めることなく利用可能です。
また、既存のネットワーク構成を大きく変更せずに導入しやすいことから、情報システム部門の負担軽減にも繋がります。職員が日常業務の中で生成AIを活用しやすい環境を整えることで、行政DXの推進やAI活用の定着も期待できます。
5. LGWANに対応した生成AIサービスを導入する際の注意点

LGWAN対応の生成AIサービスは高いセキュリティを確保しながら活用できますが、安全に運用するためには導入前の準備や運用ルールの整備も欠かせません。ここでは、導入時に押さえておきたいポイントを紹介します。
5.1. ネットワークの構成を事前確認する
生成AIサービスを導入する際は、サービス側が三層分離における「LGWAN接続」のネットワーク要件に対応しているかを事前に確認することが重要です。
導入後も、ネットワーク構成やアクセス経路に変更がないか定期的に点検することで、安全な運用を維持しやすくなります。
5.2. 生成AI活用のためのガイドラインを作成する
生成AIは、入力内容(プロンプト)や利用方法によって出力結果が大きく変わるため、適切に運用するためのガイドラインを整備する必要があります。例えば、「セキュリティが確保されていない外部の生成AIサービスに入力しない」「生成AIが作成した文章は必ず職員が内容を確認する」といったルールを定めておくことで、情報漏洩や誤情報に基づく業務遂行などを防ぎやすくなります。
また、生成AIにはハルシネーション(事実と異なる情報を生成する現象)のリスクもあるため、必ず根拠を確認する運用を徹底しましょう。
全庁で共通の基準を設けることで、不適切な利用や情報漏洩リスクを抑え、安全な運用ルールを整えることができます。
プロンプトについては、下記の記事を参考にしてください。
5.3. 職員の研修と運用の整備を行う
生成AIを効果的かつ安全に活用するには、職員一人ひとりが生成AIの特性やリスクを理解することが重要です。
研修や勉強会を通じて、導入目的や適切な利用方法、想定する活用シーン、トラブル発生時の対応手順を周知しましょう。利用目的から逸脱した使い方を防ぎ、運用後のトラブルの抑制にも繋がります。
また、導入後は利用ログを定期的に確認することで、不適切な利用や運用上の課題を早期に把握し、継続的な改善に繋げられます。
さらに研修は、トラブル防止だけでなく、利用率の向上にも欠かせません。生成AIは「導入したものの、使い方が分からず定着しない」といったケースが少なくありません。実際に操作につまずく職員も多いため、基本的な使い方だけでなく、具体的な業務での活用イメージを丁寧に伝え、一人ひとりが実際に使いこなせる状態まで支援することが重要です。
6. LGWANを活用した生成AIサービスの導入の5ステップ
LGWAN対応の生成AIサービスを効果的に活用するには、目的を明確にした上で段階的に導入を進めることが重要です。下記の図のように導入目的の整理からPoC(概念実証)、本格導入まで順を追って進めることで、運用上の課題を把握しながら全庁的な活用に繋げられます。
■LGWANを活用した生成AIサービスの導入ステップ

各ステップの詳しい内容は下記のとおりです。
■LGWANを活用した生成AIサービスの導入の詳細
| ステップ | 内容 | 詳細 |
|---|---|---|
| ステップ1 | 目的設定・体制構築 | 生成AIで解決したい業務課題や導入目的を整理し、情報システム部門や業務部門など関係者による推進体制を構築する |
| ステップ2 | ルール整備・PoC(概念実証) | 利用ガイドラインを整備するとともに、PoC(概念実証)を実施し、業務への適合性や運用上の課題を検証する |
| ステップ3 | ツール選定 | 必要な機能やセキュリティ要件を整理し、LGWAN対応の生成AIサービスを選定する。文書生成だけでなく、RAGによる庁内ナレッジ活用の必要性も検討する |
| ステップ4 | 本格導入・定着 | PoCの結果を踏まえて本格導入を進め、職員向けの研修や運用ルールの周知を行い、現場への定着を図る |
| ステップ5 | 継続改善・高度化 | 利用状況や導入効果を定期的に確認し、改善を重ねながら活用範囲を広げる。伴走支援やRAGデータの整備支援なども継続的な運用に繋がる |
7. 【福岡県北九州市】LGWAN-ASP対応でセキュアな環境を実現する「QT-GenAI」の導入事例

ここからは、QTnetが提供する生成AIプラットフォーム「QT-GenAI」を全庁で展開している福岡県北九州市の事例をご紹介します。北九州市は2025年7月に「AI活用推進都市」宣言を行い、「AI活用ナンバーワン都市・北九州」の実現に向けて、全庁的なAI活用を進めています。
<福岡県北九州市AI導入のポイント>
- 目的:全庁・全職員が利用できる本格的な生成AI活用体制の構築
- 課題:LGWAN環境下での全庁展開に必要なセキュリティと運用性の確保、保守への対応など
- 主な取り組み:QTnetレクチャーによる事前の研修会の実施後に、各所で活用開始。区役所での実証プロジェクトの実施
- 効果:職員のAI利用回数が半年間で3〜4倍以上、利用率は10%から35%に増加(2026年2月現在)。実証プロジェクトでは、生活保護分野での情報検索支援に成功し、経験の浅い職員でも迅速・的確な回答が可能に
7.1. 導入前には研修会を実施
全国の自治体に先駆けて積極的なAI施策を推進する北九州市では、2025年7月から「QT-GenAI」を導入。LGWAN環境下でも利用できる高いセキュリティや管理機能などの運用性、充実した保守体制に加え、RAG用データの保存容量が無制限である点などが評価され、7,500ライセンスで運用を開始しています。
導入にあたっては研修会を実施し、20~50代の幅広い職員約120人が参加。「画面がシンプルで使いやすく、初心者でも扱いやすい」といった声もあり、現場からの評価も得られています。
■QT-GenAIは誰でも直感的に使えるUIを搭載

7.2. 具体的な活用例
北九州市では、2025年度下半期に小倉北区役所で「QT-GenAI」を使った「生活保護の相談関連資料等の検索支援」を実施しています。この分野は法改正が多く、参照すべき資料も多岐にわたるため、相談対応には高い経験値を要します。
しかし、「QT-GenAI」のチャットに問いかければ、膨大な法令や資料から必要な情報をスピーディーに選択・提示でき、経験の浅い職員でも的確な回答が可能になりました。
「QT-GenAI」導入後の半年間で、職員のAI利用回数は3〜4倍以上に増加し、利用率は10%から35%に向上(2026年2月現在)。2027年度までに職員利用率90%達成を目標に掲げ、定型業務のAI化から市民サービス向上へと、活用の幅をさらに広げていく予定です。
■「QT-GenAI」の特長

福岡県北九州市について詳しくは、下記の記事をご覧ください。
8. LGWANに対応した生成AIサービスなら「QT-GenAI」がおすすめ

自治体で生成AIを活用するには、LGWAN環境に対応していることに加え、セキュリティや運用性、サポート体制まで総合的に比較・検討することが重要です。
これらの要件を満たし、自治体でも安心して活用できる環境を整えたい場合に有効なのが、九電グループのQTnetが提供する法人向け生成AIプラットフォーム「QT-GenAI」です。
■機能一覧

8.1. 充実したセキュリティ機能
「QT-GenAI」はLGWAN閉域接続に対応しており、自治体でもセキュリティを確保しながら生成AIを利用できます。また、自治体ごとに独立した環境で提供されるため、入力データが生成AIの学習に利用されることはありません。
さらに、NGワード設定やアクセス制限、フィルタリング機能なども備えており、自治体ごとのセキュリティポリシーに応じた柔軟な運用が可能です。
■QT-GenAIによるLLMのフィルタリングイメージ

8.2. RAGや権限管理が可能
「QT-GenAI」はRAG機能を標準搭載しており、庁内文書や規程などをデータソースとして登録することで、それらの情報をもとに回答を生成できます。外部への情報漏洩リスクを抑えながら、庁内ナレッジを有効活用できる点も特長です。
また、部署ごとの閲覧制限や利用権限の設定にも対応しているため、機密情報へのアクセスを適切に管理できます。さらに、Gemini・GPT・Claudeなど複数のLLMから用途に応じて選択できるため、業務内容に合わせて精度や特性を活かした運用が可能です。
LGWAN環境で生成AIサービスの導入を検討している方は、下記から「QT-GenAI」の資料をダウンロードするか、「お問合せ」からご連絡ください。
監修者の紹介

株式会社QTnet AI事業部 AIシニアスペシャリスト
一般社団法人生成AI活用普及協会(GUGA)協議員
ふくおか電子自治体共同運営協議会 DXプロデューサー(生成AI)
九州産業大学 AI講座 非常勤講師
佐伯 和広
2007年QTnet入社。技術部門を経て、20年から新規事業部⾨に所属し、無人店舗の実証やeスポーツ施設の新設などのプロジェクトを担当。23年からAI事業のリーダーとして法人向けマルチ生成AIプラットフォーム「QT-GenAI」のリリースなどAIを活用した新規事業の創出に従事。社外でもAI人材の育成に積極的に取り組むほか、Google主催のイベント登壇や商工会議所でのセミナー講師など生成AIの普及・教育に注力している。
9. よくある質問
QLGWANとインターネットの違いは?
LGWANは、自治体や関係行政機関、各府省庁を安全に相互接続するための閉域ネットワークで、インターネットは誰でも利用できるオープンなネットワークです。LGWANは外部ネットワークと分離して運用されるため、住民情報や行政文書など機密性の高い情報を安全に取り扱える点が特長です。
QLGWAN対応の生成AIサービスなら個人情報を入力してもいい?
LGWAN対応の生成AIサービスであっても、個人情報を入力してよいかどうかは自治体の利用ルールやガイドラインに従う必要があります。サービスによっては入力データをAIの学習に利用しない設計や、個人情報や機密情報の取り扱いについては運用ルールを十分に確認した上で利用しましょう。
QLGWAN対応の生成AIサービスはどのような業務で活用できる?
LGWAN対応の生成AIサービスは、文書やメールの作成、議事録の要約、企画書の作成支援など、日常的な行政業務の効率化に活用できます。また、RAG機能を利用すれば、条例や規程、業務マニュアルなどの庁内文書をもとに回答を生成できるため、住民からの問合せ対応や職員間でのナレッジ共有、新任職員の業務支援などにも役立ちます。




