第1回 いまテレワークが見逃せない理由

  • 本記事は2017年11月のメールマガジン配信記事です。

さて今回からテレワークの第一人者、森本登志男さんの連載がスタートします。森本さんは佐賀県最高情報統括監として5年間勤務された時、県庁職員約4,000人にテレワークを実施できる環境を構築されました。現在はテレワークによる働き方改革のエバンジェリスト(伝道者)として日本中で講演、行政や企業のアドバイスをしています。今回の連載では、森本さんへのインタビューをもとに「なぜ今の時代にマッチしているのか」「失敗例・成功例」など、担当者の”知りたい”を発信していきます。

第1回 いまテレワークが見逃せない理由

第1回は、「テレワークの基本」と「今注目を集めている理由」についてお送りします。私も皆さんと一緒に学んでいきたいと思います。

1. 講演に集まり始めたテレワーク担当者たち

「ここ1年でずいぶんと変わってきましたね」テレワーク啓発の講演などで全国を飛び回っている森本登志男さんは聴衆のある変化に気づいた。「以前は情報収集のためと思われるITやマスコミ業界の方が多かったのですが、最近ではユーザー側というか、企業のテレワーク担当者がたくさん参加されているのです」と語る。テレワークがもはや「遠くから眺めるもの」ではなく「やらねばならぬプロジェクト」として自分たちの眼前に立ちはだかっている、そう考える企業がそれだけ多いのだ。なぜテレワークに熱い視線が集まるのか。その前に、テレワークの基本について説明しよう。

2. テレワークってどういう仕事のやり方なのか?

テレワークとは英語の「tele」(遠く)「work」(仕事)を合わせた造語。森本さんは「パソコンやインターネットなどの情報通信技術(ICT)を使って、オフィスなどの定められた場所に縛られず、離れた場所で仕事することです」と明確に説明する。しかし、単なる出張はテレワークとは言わない。「距離的なものがなくなる、瞬時につながるのが大事なんです」と森本さん。その「距離をゼロ」にするのがICTの活用なのだ。テレワークしている人をテレワーカーと呼ぶ。国交省のテレワーク人口実態調査(2017年)ではテレワーカーを次の3つに分類している。

  1. 在宅型テレワーカー(自宅でテレワークを行う)
  2. サテライト型テレワーカー(自社の他事業所、共同利用型オフィスなどを利用する)
  3. モバイル型テレワーカー(顧客先、訪問先、喫茶店、図書館、移動時間などを利用する)

テレワークといってもやり方は多様であり、もちろん複数を併用している人もいる。

3. 東京オリンピック契機に国も普及に本腰

テレワークが熱いワードになっているのはなぜか?ひとつは国が普及に本腰を入れ始めたからだ。7月24日、つまり東京五輪の開幕日、内閣官房と1府4省はこの日を「テレワーク・デイ」と位置づけ、2020年の五輪本番までに企業のテレワーク実践を促していくという。初年度の2017年7月24日は900社以上が参加、時差出勤や在宅勤務などを実施した。この狙いについて森本さんは説明する。「想像してください。オリンピックで東京と周辺の会場に外国から選手や観客、マスコミなどが大挙して集まってくる状況を。その中を私たちは通勤したり、出張したりしなければならない。この混雑緩和にテレワークが役に立つのです」。実は、これには先行事例がある。2012年開催のロンドン五輪だ。ロンドン市内の混雑緩和のため、国が企業に大会期間中のテレワーク実施をはたらきかけ、ロンドン市内の企業の8割が実施、交通混雑緩和やワークライフバランスの改善などに効果をあげた。「しかも五輪後も社会的なレガシー(遺産)として定着しました」また、政府の掲げる「働き方改革」もテレワーク推進の追い風になっている。国は改革を「日本経済再生への最大のチャレンジ」と位置づけ、「働き方改革実現会議」で実行計画を決定した(2017年3月)。この中でテレワークについて「子育て、介護と仕事の両立の手段となり、多様な人材の能力発揮が可能となる」と評価し「ガイドラインの制定など実効性のある政策手段を講じて、普及を加速」と結んでいる。

4. ICTの進歩と普及が垣根を低くする

ICTの進歩と普及が垣根を低くする

もうひとつの要因はICTの進歩がテレワークの垣根を低くし、導入を容易にしていることだ。「ムーアの法則」をご存じだろうか。これは1965年に提唱された「集積回路上のトランジスタ数は18ヶ月ごとに2倍になる」という将来予測だ。この言葉に象徴されるように、コンピュータの処理能力はすさまじい勢いで進化している。インターネットも、かつてはアナログの電話回線を利用していたものが今では光回線を一般家庭でも使えるようになった。スマートフォンは一時代前のパソコンより処理能力や機能も上回っている。森本さんはICTの「進歩」に加えて「普及」の効果も加えた。「進歩したうえ価格が下がって普及しました。例えばスマートフォンは今やほとんどの人が持っています。LINEやフェイスブックなどのSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)は50歳代でも使う人が増えていますし、ネットを利用したクラウドサービスも当たり前に使っています」。こうしたテレワークの基礎となるツールやサービスが普及することで、特に企業内で決定権をもつ世代の心理的抵抗感も低くなっている、と森本さんは指摘している。現に国交省の調査(2014年度)によると、在宅型テレワーカー数は、東日本大震災の影響で激増した2011〜13年を除いても、08年の340万人から14年には550万人まで増加している。

あとがき

いかがでしたか。なぜ今テレワークに注目が集まっているのか、1つは東京オリンピックと働き方改革を進める行政の後押し2つめはICTの進歩と普及の二つが追い風になってるということでしたね。総務省による世帯普及率ではパソコンが76.8%、スマートフォンが76.0%。ICT技術の進歩によってさらに普及が進んでいきそうです。森本さんの話を聞いて私もテレワークを導入するのは今がチャンスだと思いました。次回はちょっと目先を変えて「テレワークの失敗例」について配信します。「失敗は成功のもと」とも言いますよね。失敗例から学ぶこともきっとあるはず。お楽しみに!!