生成AIとは?
できることや注意点、
ビジネスでの活用法を紹介
公開:2024年5月7日
ChatGPTの登場により、生成AIが大きな注目を集めています。企業によっては生成AIを活用する動きが始まっている一方、「生成AIによって何が実現できるのか?」「ビジネスへの活用にあたりリスクはないのか」と模索している段階の企業も多いのではないでしょうか。
この記事では、生成AIの基本からビジネスへの活用方法、活用するうえでのリスクなどを解説します。
1. 生成AI(ジェネレーティブAI)の概要
まずは生成AIの概要について解説します。
1.1. 生成AIとは
生成AIとは、学習したデータをもとに、ユーザーからの指示や質問に基づいて新しいオリジナルのデータを生成するAIを指します。
従来のAIは、チャットボットのような、投入したデータに基づき適切な回答を返すものが主流でした。一方、生成AIは、大量のデータを学習することでオリジナルなデータを新しく生成・創造できるという特徴があります。
生成AIがよく比較される対象に「識別系AI」があります。
識別系AIとは、投入したデータをもとに、新しいデータがどのカテゴリに属するかを識別するAIです。
画像内に何が映っているかを識別する画像認識や、音声で誰の・何の音声かを識別する音声認識などが主な機能となっています。識別を主な目的としているため、オリジナルなデータを生成する生成系AIとは機能や役割が異なります。
また生成AIは、「ディープラーニング(深層学習)」という学習方法を活用しています。
ディープラーニングは、コンピューターにデータを投入して学習させる機械学習の一つです。「ディープニューラルネットワーク(DNN)」と呼ばれる多層的なシステムを用いて、これまででは扱いにくかった複雑で高度なデータも処理・分析することができるようになっています。
1.2. 従来のAIとの違い
生成AIの大きな特徴は、「オリジナルなデータを生成できる点」です。
従来のAIは、決められた行為の自動化が目的であり、学習済みのデータのなかからユーザーが求める結果を返すものでした。
一方で、生成AIは単なるデータのみでなくデータのパターンや関係性などを学習することで、新たなオリジナルの結果を返すことができます。
また、生成AIには基盤モデルが活用されており、従来のAIに比べて非常に広範なタスクに対応できます。基盤モデルとは、膨大なデータを用いてトレーニングした大規模なAIモデルです。いわばAIの頭脳のおおもとだと考えるとよいでしょう。GPTやStable Diffusionなど現在注目を集めている生成AIは、基盤モデルをもとに再トレーニングして生み出されています。
2. 生成AIが注目を浴びる背景
生成AIが注目を集める大きな理由として、少子高齢化や働き方改革、DXの推進が挙げられるでしょう。
労働人口が減少している日本では、今までよりも生産性を向上させつつ、さまざまな働き方に対応する必要性が求められています。そんな中、生成AIでは、人では処理できない大量のデータを学習しスピーディーにデータを生成できます。つまり生成AIを活用すれば、企業の業務効率化・自動化による生産性向上を図れる効果が期待できます。
3. 生成AIの種類と代表的なサービス
生成AIは、機能によっていくつかの種類に分けられます。生成AIの種類と代表的なサービスを解説します。
3.1. テキスト生成AI
「テキスト生成AI」は、入力したデータに対してテキストベースでアウトプットするAI技術です。チャットボットのような質問に対する回答に加え、プログラムのコード作成や文章の要約などもおこなえます。
ChatGPT
「ChatGPT」は、米OpenAI社が2022年11月に公開したテキスト生成AIです。APIでの利用も可能であり、ChatGPTをバックグラウンドにしたアプリ・サービス開発もおこなわれています。
Gemini
「Gemini」は米Google社が開発したテキスト生成AIです。Gemini Proという独自の大規模言語モデルを利用していて、2024年2月時点では試験運用版の公開のみとなっています。
QT-GenAI
QTnetが提供する法人向けマルチ生成AIプラットフォーム「QT-GenAI」についてご紹介します。
QTnetが提供するQT-GenAIは、Google社の支援のもとアンドドット株式会社と共同開発した法人向けマルチ生成AIプラットフォームです。高セキュリティで情報漏洩のリスクを抑えつつ、複数AIモデル対応の利便性を提供しています。
QT-GenAIには、規定文書など企業独自のデータをインプットし、ユーザーに必要な情報を回答する機能も備わっています。情報漏洩のリスクを懸念し社内版の生成AI構築に踏み出せていないというお客さまもぜひお気軽にお問合せください。
3.2. 画像・動画生成AI
「画像・動画生成AI」は、指定したテキスト内容にしたがって画像や動画を生成するAIです。
生成される画像・動画の精度は日々向上しており、ゲーム開発分野やSNS・Web広告のデザインなどへの活用も始まっています。
MidJourney
「Midjourney」は、プロンプトからテキストを入力して画像を生成する画像生成AIです。2023年12月にはMidjourney V6がリリースされ、より短いプロンプトでより高解像度の画像を生成できるようになっています。
Stable Diffusion
「Stable Diffusion」は、Midjourneyと同じくテキストから画像を生成する画像生成AIです。オープンソースのため、誰でも無料で利用できます。
3.3. 音声生成AI
「音声生成AI」は、テキストや音声で学習したデータに似た新しい音声を生成するAIです。ある人の音声データを学習させれば、その人と同じ声色でさまざまな文章を読む音声を生成できます。
3.4. 自動翻訳AI
「自動翻訳AI」は、テキストや音声で入力した言葉を別の言語にリアルタイムで翻訳するAIです。大量の学習データから入力された言葉の文脈を識別し、リアルタイムで精度の高い翻訳ができるため、接客やカンファレンスでの利用など、幅広いシーンで活用できます。
QTnet AI翻訳ソリューション
QTnetが提供する「QTnet AI翻訳ソリューション」は、台湾のスタートアップVM-Fi 社と共同開発した「リアルタイムAI音声翻訳システム」を採用した、簡単な操作によりリアルタイムで途切れない翻訳を実現するソリューションです。2023年7月~8月、世界水泳福岡会場に設置されたFukuoka Ichibaの観光案内窓口で採用され、高い翻訳精度や優れた翻訳スピードに大きな反響をいただいています。
また、福岡市中央区天神にあるソラリアプラザ1階のインフォメーションセンターでは、2023年12月21日から2024年1月19日まで、AI音声翻訳サービス「TransDisplay(トランスディスプレイ)」の実証実験をおこなうなど、さらなるAI音声翻訳サービスの活用への取り組みを進めています。
QTnetでは、お客様の現場課題にあわせて多くのプランを提供するとともに、デバイスのレンタルサービスもおこなっています。自動翻訳AIにご興味をお持ちの際は、ぜひお気軽にお問合せください。
4. ビジネスシーンにおける生成AIの活用
2023年6月20日に公開された帝国データバンクのアンケートによると、業務で生成AIの活用・検討をしている企業は61.1%にのぼりますが、実際に業務で活用しているのは9.1%に留まっています。
また、業務で生成AIを活用している企業の規模別の割合は、大企業が13.1%、中小企業が8.5%となっており、中小企業のうち小規模企業の割合は7.7%となっています。今後も規模が大きい企業を中心に積極的な業務への活用が予想されますが、一方ではセキュリティ面のリスクが懸念され、業務利用を全面的に禁止している企業もあるのが実情です。
4.1. 生成AIの活用法とメリット
生成AIはビジネスにおける業務にどのようなメリットをもたらすのでしょうか。想定される6つのメリットをご紹介します。
作業や業務の効率化に役立つ
生成AIは作業や業務の効率化に活用できます。
例えば、インターネット上の記事や論文を要約して情報のインプットを効率化したり、メールや報告書などのベースとなるテンプレートを生成して文書作成を効率化したりなど、活用できるシーンは多くあるでしょう。
社内情報の抽出や共有に利用できる
社内情報を生成AIに学習させ、社内版の生成AIを構築することもできます。
社内版の生成AIを構築しナレッジを蓄積しておけば、社内独自の制度や仕組みに対応したFAQを導入できるでしょう。
また、社内の誰でも同じ情報にアクセスできるようになるため、組織やチーム間での情報共有が円滑になり、業務で必要な情報をすぐに入手できるようになります。
具体的なアウトプットを短時間で生成できる
生成AIは多数のパターンやバリエーションを出力できます。
ビジネスにおいては、例えばマーケティングのターゲット選定や商談のアプローチ方法など、複数の選択肢を検討したうえで最終的な判断をおこなうシーンが多々あります。生成AIはシーンに応じて複数の選択肢を提案、シミュレーションしてくれるため、より具体的なアウトプットをもとに作業や検討を進められるようになります。
新しいアイデアを生み出す手助けになる
生成AIはアイデア出しにも活用できます。
具体的な内容とともにアイデアを求めれば、それに対するアイデアを生成してくれます。例えば業務改善の進め方や新商品のキャッチコピーなど多くのリクエストに対応可能です。
生成されたアイデアをそのまま活用できるかは精査が必要ですが、今までになかった新しいアイデアを生み出すきっかけになるかもしれません。
プログラミングのコード生成やデバッグに役立つ
生成AIの大きな活用法の一つがプログラム開発の補助です。
ベースとなるプログラムのコードを生成したり、作成したプログラムをデバッグしたりなど、プログラム開発を効率化できます。
業務で使用しているプログラムが管理者不在のため改修不可能となっている状況でも、生成AIにプログラムの内容を解説させ、必要な改修内容を指示することで問題の解決を図れるでしょう。
社内外のコミュニケーションリソースを削減できる
生成AIを活用すれば、社内外のコミュニケーションに必要となるリソースの削減につながります。
例えば、社内のナレッジ共有や業務の引き継ぎにおいて担当者が疑問を抱きやすい点を補足する、社外顧客のカスタマーサポートに対する意見や顧客ニーズを学習して改善に必要となる要素を抽出するなど、社内外のコミュニケーションリソースを削減するアプローチが容易になるでしょう。
4.2. 企業における生成AIの活用事例
続いて、企業における生成AIの活用事例をご紹介します。
生成AIを活用した職員の生産性向上(福岡市)
当社は福岡市と、「生成 AI を活用した職員の生産性向上」の実証実験に取り組んでいます。
2023年10月1日~2024年3月31日にかけて、QTnetが提供するQT-GenAIを用いて報告書や議事録の作成業務をおこない、行政および行内業務の効率化や生産性向上の効果を検証する計画です。市職員のAIリテラシーを高め、生成AI活用による生産性向上の効果を促進するため、市職員向けのプロンプティング研修などにも取り組んでいます。
生成AIプラットフォームの活用(大分銀行)
大分銀行においても、福岡市と同様にQTnetが提供するQT-GenAIを用いた業務の生産性向上に向けた実証実験に取り組んでいます。文書作成や要約など、行内の各種業務を効率化するとともに、行員のITリテラシー向上を図る計画となっています。
5. 生成AI導入における注意点
生成AIは非常に便利な技術ですが、利用の際に注意すべき点も多く存在します。4つのポイントを解説します。
5.1. 生成AIの得意不得意を理解する
生成AIには、得意とする領域と不得意とする領域があります。学習データをもとにアウトプットを生成することは得意ですが、人間ほど高度な思考や感情の読み取りは苦手とされています。そうした特性を理解したうえで活用することが望まれます。
5.2. セキュリティに十分配慮する
生成AIの学習データとして不用意に社内情報を入力すると、その情報が社外に流出する可能性があるため、セキュリティには万全の対策をしたうえで利用することが求められます。
5.3. 著作権の所在に注意する
生成AIは膨大な学習データを取り込みますが、なかには著作権のあるデータが混在しているケースもあります。生成の指示の仕方によっては一般のコンテンツの著作権を侵害しかねない点を認識しておきましょう。
5.4. 生成されたアウトプットを必ずチェックする
生成AIは発展途上の技術であり、一見正しいように見えてもフェイクコンテンツや誤ったアウトプットが入っている可能性があります。生成されたアウトプットは必ず人の目でチェックし、間違ったデータを用いないよう注意しましょう。
6. まとめ
生成AIの技術は日々発展しており、今後より多くのシーンで活用が期待されています。一方、生成AIの活用では、セキュリティリスクやユーザーのリテラシー、著作権問題などが課題となります。
導入を検討する際には、セキュリティリスク対策が充実した生成AIのソリューションを選ぶとともに、社員が生成AIを有効に使いこなすために教育の機会を設けることも重要となるでしょう。